別れと出会い、思い出は空の影に。
今週のお題「引っ越し」ということで、
どうも、生まれてから引っ越し経験のない避野です。
もう春の気候がなんとなくその影を見せて、というか花粉のせいで強制的に春の到来を感じざるを得ないです。
花粉症なんてなければもっと春のこと好きになれるのに…
なんて少女漫画のセリフみたいなこと言うとりますが、春といえば出会いと別れの季節。
進学、就職、その他切替、転換の季節”春”ですのできっと世の中の不動産屋はここぞとばかり忙しくしていることでしょう。
さて、冒頭言いましたが私避野は引っ越し経験がありません。
進学も地元ですし、就職も一人暮らしするほどの距離でもなかったので貯金のため実家暮らしを続け親や祖母の世話をしながら慎ましく生活しているわけなのですが、
引っ越しというと私の中に残る小学校の頃の少し苦い思い出が蘇ります。
今日はそんな私の少し苦い思い出を話そうかなと思います。どうぞお付き合いください。
小学校では良くあるイベント「クラスから転校生が出てしまう」ようは友人が一人減ることがあるわけです。
理由はほとんど親の事情。転勤だったり離婚だったり、子供には転校を拒絶できる理由などなく、親と生活せざるを得ませんから自ずと転校していく友人たちがいるわけです。
私も小学校、中学校と何人もの友人が転校していきました。
もちろん転校生としてやってきて、とても仲良くなった友人もいるのですが
そういえば”転校生”という言葉、来る方であって出ていく方は”転出”というらしいです。つまり「〇〇小学校を転出して、〇〇小学校に転校する」となるわけです。
日本語難しいです。いや本当に。
それは置いておいて、私の友人にY君という子がいました。
その子は幼稚園からの友人で、私の人生最初の友達でした。
しっかりと覚えています。幼稚園に入園して数日、親のいない環境に耐えられず寂しくなり私は泣いてしまっていました。そんな私に声をかけてくれて、送るバスに乗るまでの間手を繋いでいてくれたのがY君でした。
そんなY君は私の憧れでした。サッカーを習っていて、足が早くて、勉強ができて、歌もうまかったY君。
優しくて、いつもクラスの中心で、活動的だったY君。
私はいつも目標になってくれるY君が大好きでした。ある時期、なぜかY君がクラスで浮いている時期があったのです。理由はわかりませんでした。
私の通っていた小学校はいくつの町から集まって形成されるものだったので登下校で一緒になるかや、近所で遊べる範囲かでクラス内でもグループが決まっていたのです。
しかしそんな中、私は近所に友人が住んでいなかったもので下校も途中から一人、遊ぶのも友人宅に行くために子供の足ではかなり歩くような場所に住んでいたため、放課後、遊びに参加していない日の翌日は遊んだことの話題にはついていけなませんでした。
あの時期なんでY君がちょっと浮いていたのかの真相は定かではありませんが、私は幼心になんかおかしいなと察知していました。
しかし、私はY君が大好きだったし、そんな浮いてるとか知ったこっちゃないです。だって理由を知らないんだから。
だからY君とは普通に休み時間喋ったし、昼休みも遊びました。
そういう生活が続いたある日、担任の先生から突然告げられたのです。
「Y君が今度転校することになりました」
私はものすごく衝撃を受けました。それまで1年から5年間、何人か転校していった友人はいました。
しかし正直、その転校していった子たちはそんなに仲の良い友人ではなかった。しかも幼稚園からの友人が転校するなんて想像してなかった。ずっと同じ地域に住んでいるんだからこれからもずっと、そう、勘違いしていました。
「どうして」私は先生の話が終わった後、Y君にすぐ聞きに行きました。
理由は親の離婚。Y君は家を出る母親と住むため、一緒に引っ越すことになったのだとか。
私はY君の家には何度も遊びに行ったことがありました。Y君のお母さんはかなりしゃっきりした人で、私がY君と悪いことをすると一緒に叱ってくれるような人でした。
お父さんとも会ったことがあり、優しくて背の高い土日に遊びにいってもパソコンで仕事をしている人でした。
大人になった今ならいろんな想像ができますが、当時は離婚なんて身近じゃなかったし意味がわからなかった。
第一友達がいなくなってしまうことがショックすぎてなにも考えられなくなった。
Y君の転校が迫ってくる中、クラスには教育実習生とのお別れもありました。
その日実習生の方の最後の授業で「ちいちゃんのかげおくり」という物語を習いました。痛ましい戦争の記録と、少女の命、そしてかげおくり。知らないなという方はぜひ調べてみてください。
その日の放課後、なんでそうなったのかは覚えてないのですが、実習生の先生と、Y君と私と3人で校庭の端、鉄棒の前でかげおくりをすることになりました。
実習生の先生を間に挟んで3人で手を繋いで影を見つめる。
大学生の女性でも、小学生からすれば立派な大人。その手はしっかりとしていて、温かったのを今も覚えています。
影を見つめること10秒。瞬きせずにじっと見つめて、せーので空を見上げる。
その日の夕暮れは真っ赤で、眩しくてどこかさみしくて、そこには3人の姿がはっきりと空に浮かんでいました。
Y君が転校する日、お母さんと一緒に荷物を持って歩いていくY君を見かけたのは偶然でした。
前日にクラスでお別れ会をして、明日は荷物だけ取りに来て帰る。そう聞いていたのでこれが本当のお別れだと思っていたのに、休み時間に移動教室をする際昇降口に二人がいました。
慌てて駆け寄って、声を掛ける。昇降口には3人きり、呼び止めておいて言葉は続きませんでした。
「また、どこかで…」
私はうまく言葉にできなくて、Y君と最後握手だけして別れたのです。
それから数年。
高校生になった私は、彼が転校した先でクラスメイトになった人と出会いました。
Y君について尋ねると、彼は変わっていないようでした。相変わらず運動と勉強は優秀だったようで、中学ではモテたんだとか。
その話を聞いて、私はちょっとした安堵と、モテたことへの憎悪をすこし感じたのでした。